ヤマト運輸株式会社(代表取締役社長:長尾裕)は、4月1日にスタートする新組織体制を決定し、その内容を公表した。
新体制の概要
ヤマト運輸の新体制の概要は次のようなものだ。個人、法人の顧客や、社会の課題に正面から向き合う4つの事業本部「リテール事業・法人事業・グローバルSCM事業・EC事業」と、データ活用による輸送ネットワークの最適化やデジタルシフトなどを通じて各事業の成長を支援する4つの機能本部「輸送機能・デジタル機能・プラットフォーム機能・プロフェッショナルサービス機能」、および両本部の運営を統制し、会社運営に必要な業務を行うコーポレート部門で構成されるとしている。
各組織の概要
◆リテール部門
[リテール事業本部]
個人および中小口の法人の顧客に向けた輸配送の利便性向上と価値提供を担う。第一線で集配を行う宅急便の営業所、地域を統括する主管支店にくわえ、中長期的なリテール事業戦略の立案を行う「事業戦略部」、集配・作業・事務業務の標準化、効率化と、顧客とのエンゲージメント強化を目指す「オペレーション推進部」、「CX推進部」等で構成される。
◆法人部門
[法人事業本部]
国内、地域の法人の顧客の持続可能なサプライチェーン構築に向けた価値提供を担う。法人顧客へのソリューション営業と、最適なオペレーション設計を連携するため、「営業統括部」と、「オペレーション統括部」等で構成される。
[グローバルSCM(サプライチェーンマネジメント)事業本部]
国内外に事業展開をするアカウントに対するグローバルサプライチェーンへのトータルな価値提供を担う。顧客のサプライチェーン課題に向き合い、アカウントマネジメントを展開する「営業統括部」、グローバル領域における経営資源の最適配置と仕組みを構築する「国際戦略統括部」等で構成される。
[EC事業本部]
ECエコシステムの創出により、ECビジネスの持続的な拡大を担う。持続的なECビジネスへ向けた事業戦略の立案・実行・検証を行う「事業戦略部」、EAZY CREWネットワークの高度化・安定的な品質の向上を推進する「ネットワーク戦略部」等で構成される。
また、法人部門の3本部を統括する社長直轄の組織として、法人事業の全体戦略を策定し、実行に向けた仕組みを構築する「事業戦略統括部」、法人顧客のニーズをスピーディーに収集、集約し、質の高い提案に結びつける「法人ソリューションコントロールセンター」を新設する。
◆機能本部
[輸送機能本部]
ヤマトグループのベース機能等をふくむ輸送ネットワークの全体最適化を担う。輸送機能を中長期的に戦略立案し、その実現に向けた仕組みを開発する「輸送戦略企画部」、および業務環境における安全を推進する「輸送安全衛生管理部」等で構成される。
[デジタル機能本部]
各オペレーションをトータルに支えるITの開発、およびデータ活用を通じて、顧客とヤマトグループの企業価値向上を担う。顧客への高付加価値サービスを提供する「デジタル改革部」、データ活用の最大化によりデータ・ドリブン経営を推進する「デジタルデータ戦略部」等で構成される。
[プラットフォーム機能本部]
4500万人を超えるクロネコメンバーズ会員、130万社を超えるヤマトビジネスメンバーズ会員に向けた生活、ビジネスの価値向上と、エンゲージメントの強化を担う。新規事業を企画する「機能戦略部」、データを活用した競争力ある商品企画・販売モデルの構築を通じて、顧客の利便性や、収益の最大化を支援する「事業推進部」等で構成される。
[プロフェッショナルサービス機能本部]
第一線の社員が顧客への価値提供に専念できる環境を整備するため、BPRを推進し、管理・間接業務の効率化を担う。ヤマトグループ全体の調達業務を一元的に担い、コスト削減を実現する「グループ調達部」、「機能企画部」、および「会計マネジメント部」等で構成される。
◆コーポレート部門
機動的な経営戦略を策定し、各事業本部・機能本部の運営を統制、支援するとともに、経営管理や内部監査など会社運営に必要な業務全般を担う。経営戦略部・人事部・サステナビリティ推進部、新たなビジネスモデルの構築を推進するイノベーション推進部や、各地域の人事部門・安全部門等をコーポレート部門管下の組織とすることで、会社全体のガバナンスを強化するとともに、各地域でOneヤマトを具現化する全国の地域統括組織等で構成される。
新たなヤマト運輸としてスタート
同社は新体制の構築に至った背景と目的について次のように述べている。
「4月1日、ヤマト運輸はグループ7社の経営資源を結集し、『新たなヤマト運輸』としてスタートします。個人・法人のお客さま、そして社会のニーズに正面から向き合い、経営資源をより磨き、お客さまの暮らしとビジネスのベストパートナーとなるため、リテール・法人の2部門からなる『4事業本部』と、各事業を支援する『4機能本部』、および『コーポレート部門』からなる新組織とし、第一線と経営の距離を縮め、意思決定のスピードを速めます」
EC市場の発展にともなう物流量の増大、そしてそれによる再配達の頻発や、人的リソースの枯渇、新型コロナウイルスによる感染拡大、迫られるデジタル化など、同社のみならず物流業界は荒波に見舞われている。そうした中で社会基盤を支える物流業界の代表的企業として資源を結集しつつ、その責務を果たすという同社の気概が読み取れる新体制の発表となった。ECのラストワンマイル配送を支えるヤマト運輸は、新体制のもとで新たな地平を切り拓くことになりそうだ。
引用:2021/03/18 ECのミカタ編集部