今や都市の新しい風景にもなったフードデリバリー。配達員は、コロナ禍の雇用の受け皿にもなった。だが、彼らは「個人事業主」。急成長の陰で、労働環境の悪化が浮き彫りになってきた。AERA 2021年5月3日-5月10日合併号で取材した。
世界を一変させた新型コロナウイルスは、都市に新たな風景を生んだ。四角い大きなバッグを背負い、自転車やバイクでさっそうと街中を走り抜けるフードデリバリーだ。
朝10時。横浜に住むシングルマザーのエミリアさん(ハンドルネーム、24)は小学1年の息子(7)が登校すると、原付きバイクに乗り配達に出かける。 「雨の日は注文が多くなるので大変。スリップが怖くてノロノロ走ってます」 彼女は、フードデリバリー「ウーバーイーツ」の配達員だ。
飲食店で働いていたが昨年6月、コロナ禍で店が突然休業になった。収入は途絶え、貯金もない。シングルマザーで昼間も働ける仕事を探したが、見つからない。そんな時、母親が紹介してくれたのがウーバーだった。
昨年10月に配達を開始。近くに住む祖母に子どもを預け、配達料の上積みが期待できる夜も働き、月10万円近い収入を得られるようになった。最近はネット配信など別の仕事も始めたので、1日1万円を目標に週3~5日ほど稼働する。ウーバーがなかったら、職を失い仕事がない時は精神的に追い詰められていたと振り返る。
「働いたら働いた分だけちゃんとお金が入る安心感ってやっぱり大事。仕事に対する意欲が向上します」(エミリアさん)
■利便性とコロナで急成長 デリバリーを支える配達員 ウーバーは、米IT大手のウーバー・テクノロジーズが手掛けるオンラインの食事配達サービスだ。2015年にカナダでサービスを開始し、翌16年9月に日本に上陸した。 利便性と、新型コロナ禍での「巣ごもり需要」を背景に急成長。今やウーバーと日本発の「出前館」の2強に、フィンランド発の「ウォルト」、日本発の「menu」、中国系の「DiDiフード」、国内ベンチャーの「チョンピー」、ドイツ企業傘下の「フードパンダ」など、国内外から新規参入が相次ぐ。
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引用:AERA dot.