2021/11/22 NHK総合 【ひるまえほっと~関東~】
<神奈川県の話題>ウエディングの廃棄花をいかす
結婚式で、沢山飾られているものといえば花。
参列者が持ち帰ることもあるが、ほとんどは数時間飾っただけで捨てられてしまう。
破棄される花を有効利用したいと取り組みを始めた人がいる。
結婚式を華やかに彩ってくれる花が、カラフルでおしゃれなフラワーキャンドルに。
神奈川県茅ヶ崎市に住むフラワーキャンドルデザイナーの安永かおりは、元々は売っている花を使ってキャンドルを作っていたが、今は廃棄される花だけを利用している。
キャンドルの作り方は、ドライフラワーにした花を型に詰め込み、ろうを流したら完成。
取り組みを始めたのは3年前。
きっかけはキャンドルの取引をしていた結婚式場で知った花の使われ方だった。
今では6つの結婚式場と提携し、活動に協力してくれる新郎新婦からテーブルなどに飾られている花を譲り受けている。
今、安永のもとには沢山の花が次々に送られてきている。
コロナ禍で、多くのイベントが中止、延期される中、廃棄せざるを得ない花を抱えた農家などからも花が送られてくるようになった。
こうした中、安永は多くの人の力を借りて廃棄される花を活用したいと去年、日本サステナブルフラワー協会という団体を立ち上げた。
会員は、廃棄される花の問題やフラワーキャンドルの作り方をオンライン講座で学ぶことができる。
これまでに国内外の200人以上が受講し、中には花業界で働く人もいる。
この日、安永は東京・新宿の百貨店で、フラワーキャンドル作りを体験できるワークショップを開いた。
オンライン講座を受講した人も、アシスタントとしてサポートしてくれた。
安永はこうした活動を通じて、廃棄される花の現状を少しでも多くの人に知ってもらいたいと考えている。
フラワーキャンドルはアロマオイルを入れているので、とてもいい香りがする。
こうしたお花を見ているだけでも癒やされるのでインテリアとしてもおすすめ。
引用:JCC株式会社
「お花を一輪でも救いたい!廃棄花に新たな〝命〟を」 フラワーキャンドルデザイナー安永かおりさん
フラワーキャンドルデザイナー 安永かおりさん(32)
埼玉県出身。都内の企業に務める傍ら、趣味で「海」をモチーフにキャンドル作りをスタート。SNSで話題となり、2016年にはオリジナルブランド『 moani (モアニ)』を創設。2019年からは廃棄される草花を利用した「ボタニカルキャンドル」やブーケなどの制作を軸足に、ワークショップや教室を主宰し、幅広い活動を行っています。2020年11月より、『日本サステナブルフラワー協会』を発足。SNSを通じて『ロスフラワーキャンドルプロジェクト』を呼び掛け、アーティスト育成などに力を入れています。2015年に茅ヶ崎へ移住。
花屋で売れ残った切り花や、結婚式場で使用されたブーケ、イベント会場の装飾用の花々ー。みずみずしく、まだ十分に美しく咲き誇っているのに、役目を終えた”小さな命”は毎日、当たり前のように捨てられています。特に、コロナ禍でイベント中止が相次ぎ、需要が低迷したことで、この問題は改めて浮き彫りになりました。
そんな「廃棄花」を減らすために尽力している女性が茅ヶ崎市内にいます。若松町在住の安永かおりさん(32)に、フラワーロスの活動や茅ヶ崎暮らしについて話を伺いました。
桜道に、花いっぱいのアトリエ
最初にかおりさんを訪ねたのは、2021年1月のこと。アトリエは、花にちなんだ名を持つ「桜道」の一角にありました。部屋に一歩足を踏み入れると、花とアロマがふんわりと香り、捨てられたとは思えないほど色彩豊かな花が一面に広がっています。
「ちょうど今、お花が届いたばかりなんです」。かおりさんは、そう朗らかに微笑みながら出迎えてくれました。
アップサイクルというより「アート」
「フラワーキャンドルデザイナー」として多岐にわたる活動をしているかおりさん。2016年にはオリジナルブランド『moani(モアニ)』を立ち上げ、廃棄花やドライフルーツを色彩豊かに詰め込んだ「ボタニカルキャンドル」のほか、ブーケやスワッグ(壁飾り)の制作、ワークショップや教室を主宰しています。
近年の活躍ぶりはめざましく、横浜の百貨店での催事イベントや、ブライダル事業、人気の女性誌からの取材、ラジオ・テレビ出演など、オファーは引きも切りません。
「廃棄花」の存在を知り、何とかしたいと使命感を抱くようになったのは、ウェディングの仕事を受けるようになった2019年から。「結婚式場やイベントで捨てられる大量の花を見て、自分一人でも何とかしないといけない。捨てずに、ちゃんと生かしてあげたいなって思ったんです」
そこで、廃棄花をキャンドルの表面に溶かし込んで「ボタニカルキャンドル」として昇華。再び新たな命を吹き込むようになりました。キャンドルの中で、花がつややかに美しい色を放っている様は「アップサイクル」というより、もはや「アート」です。
大量の廃棄花「わたし1人じゃ到底無理だなって」
「この壁に掛かっているお花は全部、ひとつのお花屋さんから届いた1週間分の廃棄花なんです」
こう話す目線の先にあるのは、壁いっぱいのお花たち。数日前から逆さ吊りにしてドライにしていますが、どの花も赤、青、黄、橙、ピンク、紫と、それぞれの色彩を保っています。一見しただけでは、これが「廃棄花」なんて思えないくらいの美しさです。
「これが現実で、こんなにたくさんのお花が日本中、世界中で廃棄されています。もちろん、誰も決して『捨てたい』なんて思っていなくて。大好きな花を捨てることに胸を痛めているんです。イベントで装飾したりワークショップを行うことで、この問題を知ってもらうことも大切ですが、根本的には解決にはなりません」
諸説によれば、生花店の35%ほどの花が廃棄されているそうです。花業界の大量生産・大量消費という流通構造が主な要因となっています。「わたし1人で頑張っても、到底抱えきれない問題だな、限界だなって」
切実な思いから協会を創設、コロナ禍が後押しに
そんな歯痒さや切実な思いの中、「私にできることは何だろうと、いろいろ調べていくと、廃棄花問題の解決は国連で決められたSDGsの項目にも当てはまり、私にもできる、誰にでもできる、サスティナブルな活動だと気づきました」。そこで、2020年春に「日本サステナブルフラワー協会」を発足。フラワーロス解決に向けて、ともに活動してくれるアーティストを育成・輩出することを決意しました。
その名も「re;bloom artist(リブルームアーティスト)」。再生を意味する「re;」と、咲く「bloom」を掛け合わせたかおりさんオリジナルの造語です。再びお花に命を吹き込むアーティスト…!なんて心がときめく活動でしょう。
しかし、奇しくもコロナ禍による自粛期間中。「本当はこのアトリエに生徒さんを呼んで通ってもらう予定でしたが、コロナ禍で集まれなくなったので完全オンラインに切り替えました。でも、逆に後押しになって、北海道から沖縄まで全国の方が参加してくれています」
現在の会員数は200人超。生業として花に携わっている生花店や農家さんのほか、廃棄花の問題を全く知らなかったという人、ロスの現状は知っていたけれど自分にできることが分からなかったという人など、参加の理由はさまざまです。
「根本にあるのは、みなさんお花が好きだということ。そして何かしたいと思ってくれています。ありがたいですね。まずは2030年までにフラワーロスが出ない世界をめざし、みなさんと一緒に廃棄花を活用したキャンドル制作のほか、啓発活動に励んでいきます」
地元のお店とのパートナーシップ
5月の昼下がり。ラチエン通りを風を切りながら、電動付き自転車を走らせるかおりさんの姿がありました。白いTシャツに、切りっぱなしのジーンズ。アトリエやイベントで見せるエレガントな装いから一変。カジュアルな雰囲気は、茅ヶ崎の街並にしっくり馴染んでいます。
訪れたのは、『Rachien Smoothie』。フラワーキャンドルの納品にやって来ました。
茅ヶ崎市内でかおりさんの作品を取り扱っているのは、こちらの1店舗み。そして、お店側も、かおりさんのキャンドル以外の物販は行っていません。深い絆でパートナーシップを結んでいます。その理由についてオーナーの橋本京子さんは「作品も好きだけれど、彼女のことが好きだから」ときっぱり。
さらに橋本さんはこう続けます。「お店にアーティストさんの商品を置く場合、やはり信頼関係が大切だと思っています。『可愛いから』『人気だから』という理由だけでは私もお客様にお勧めできません。実際、キャンドルをお売りする時は、かおりさんについても一緒にお伝えしています」。かおりさんの人柄をうかがい知れる素敵なエピソードです。
茅ヶ崎の活動についてかおりさんは、「今までは都内や横浜でのイベントやオファーが多かったのですが、子どもが生まれたこともあり、茅ヶ崎で根付いてやっていきたいとの思いが強くなりました。もっと地元の花屋さんや街の人とつながって、廃棄花の仕入れやコラボを展開していきたいと思っています。今はどうしたら茅ヶ崎で活動の幅を広げられるか模索中です」とおっとりと微笑みます。
茅ヶ崎に住んでから全てがうまくいくように
「海が大好きだから、海の近くに住みたい」と選んだ茅ヶ崎暮らしは6年目。かおりさんの退職を機に、平塚出身でサーフィンが趣味だという裕太さんと住み始めました。キャンドルを始めたのも、ちょうどその頃です。
当初の作風である、海やサーフィンのフィンをモチーフにしたキャンドルは、まさしくこの湘南の海からインスピレーションを得たもの。ハワイ語で「海から運ばれてくる香り、そよ風」を意味するブランド名『moani』も、ハワイの雰囲気をもつ茅ヶ崎の海と、自身の名前から名付けられたものです。かおりさんの人生の帰路は、茅ヶ崎だったとも言えるかもしれません。
「最初に茅ヶ崎に来た時は、空が広くて開放感があるのが印象的でした。最近では逆に、都内へ行くと空の狭さにびっくりしますし、茅ヶ崎駅で電車を降りると、茅ヶ崎のにおいがして『あぁ、この空気感』と息がつけるんです。両親からもよく言われるのですが、5、6年前の自分と比べると、ずいぶん肩の力が抜けたと思います。当時は渋谷の高層ビルで働いていたこともあって、下を見ていることが多かった。でも、茅ヶ崎に来てらからは全てがうまくいっていて、茅ヶ崎に移住して本当に良かったです」と絶賛します。
現在は2児のママ。1歳の湊優(みゆ)ちゃんと11月に生まれたばかりの彩希(さき)ちゃんの4人で、茅ヶ崎でのライフスタイルを満喫しています。
裕太さんも「今までは仕事三昧で、年に数回しかサーフィンをしていなかったのですが、茅ヶ崎に来てからは休日ごとにサーフィンを楽しむようになりました。茅ヶ崎はおしゃれな個人店があったり、イベントもたくさんあって、とても楽しいですね」と笑います。
「引っ越しするなんて考えられないです」。子どもが生まれてから、余計に茅ヶ崎が大好きになったというおふたり。実は、かおりさん夫妻のもとに遊びに来ていた友人や家族が、茅ヶ崎でのライフスタイルをすっかり気に入って、関西など他県から移住して来たのだとか。家族4人で、いかに充実した日々を過ごしてるかが分かりますね。
フラワーロス「ゼロ」が目標
かおりさんは最後にこう結びます。「簡単なことではないけれど、いつかフラワーロスをゼロにすることが目標です。そのためには、まずフラワーロスの問題や、解決のために活動をしている人がいることを知ってもらいたい。花を救い、地球上の廃棄量を減らすというサステナブルな観点だけではなく、お花が大好きで、お花に携わる人たちの『捨てなくてはならない心苦しさ』も減らすことができたらと考えています。今までは、花を『捨てる』のが当たり前でしたが、その当たり前を少しでも変えていけたら」
花を『捨てる』のではなく『生かす』文化は、ここ茅ヶ崎からかおりさんが発信していきます。
引用:TOWNNEWS-SHA